精神疾患にかかってしまい、日常生活や仕事ができなくなってしまった場合でも、障害年金を受給できることを知っていますか?
「自分があてはまるのかどうかわからない!」という方いらっしゃいませんか?
「障害年金」とは、病気やけがなどによって障害の状態になったとき、生活を支えるものとして支給される年金制度のことです。
審査が厳しく、審査期間が長いといわれていますが、認定されると生活の基盤にもなります。
この記事では、3歳で発症した小児がんの闘病で晩期障害が残り、7歳で発達障害と診断され、二次障害を発症し引きこもりになった子どもの障害年金の手続きをした経験から、
- 精神疾患のある障害年金とは?
- 精神障害の障害年金の対象者は?
- 精神障害の障害年金の障害等級は?
- 精神障害の障害年金の認定基準は?
などについてご紹介します。
障害年金とは?
「障害年金」とは、病気やけがによって障害の状態になったときに受け取ることができる年金のことをいいます。
障害年金には「障害基礎年金」「障害厚生年金」があり、病気やけがで初めて医師の診療を受けたときに国民年金に加入していた場合は「障害基礎年金」、厚生年金に加入していた場合は「障害厚生年金」が請求できます。 なお、障害厚生年金に該当する状態よりも軽い障害が残ったときは、障害手当金(一時金)を受け取ることができる制度があります。 また、障害年金を受け取るには、年金の納付状況などの条件が設けられています。
引用元:日本年金機構
心身の病気や障害によって、仕事や生活に大きな支障がある状態になったときに受け取ることができる年金になります。
下記で、障害年金の対象者や請求手続きなどについて、まとめてありますので参考までにどうぞ。
》【障害年金】対象者や等級、認定基準や請求手続きなどをわかりやすく解説します!
精神障害の対象となる人
認定基準
令別表 | 障害の程度 | 障害の状態 | |
国年令別表 | 1級 | 精神の障害であって前各号と同程度以上と認められる程度のもの。 | |
2級 | 精神の障害であって前各号と同程度以上と認められる程度のもの。 | ||
厚年令 | 別表第1 | 3級 | 精神に、労働が著しい制限を受けるか、または労働に著しい制限を加えることを必要とする程度の障害を残すもの。 |
精神に、労働が制限を受けるか、または労働に制限を加えることを必要とする程度の障害を残すもの。 | |||
別表第2 | 障害手当金 | 精神に、労働が制限を受けるか、または労働に制限を加えることを必要とする程度の障害を残すもの。 |
『精神疾患にかかる障害年金請求手続完全実務マニュアル3訂版 P37』により作成
等級と障害の状態
このほかそれぞれの疾患によって、障害の等級が細かく認定基準が決められています。
傷病区分
統合失調症、統合失調症型障害および妄想性障害、気分(感情)障害
最も該当者が多く、よく知られている傷病区分になります。
障害の程度 | 障害の状態 |
1級 |
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2級 |
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3級 |
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- 「統合失調系の疾病に障害」…残遺状態*または症状があることによる日常生活の制限の程度。
- 「気分(感情)障害」…症状が繰り返すこともあり、症状の経過や日常生活の活動などの状態も考慮する。
*主な症状が回復した後も長く症状が残ること。
人格障害は、原則として認定の対象にはなりませんので注意が必要です。
症状性を含む器質性精神障害(高次脳機能障害を含む)
中枢神経等の器質障害を原因として起こる精神障害の障害区分になります。
障害の程度 | 障害の状態 |
1級 | 高度の認知障害、高度の人格変化、その他の高度の精神神経症状が著明なため、常時に援助が必要なもの。 |
2級 | 認知障害、人格変化、その他の精神神経症状が著明なため、日常生活が著しい制限を受けるもの。 |
3級 |
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障害手当金 | 認知障害のため、労働が制限を受けるもの。 |
- 先天異常、頭部外傷、変性疾患、新生物、中枢神経等の器質障害を原因として生じる精神障害。
- 膠原病や内分泌疾患を含む全身疾患による中枢神経障害等を原因として生じる症状性の精神障害。
- アルコール、薬物等の精神作用物質の使用による精神及び行動の障害(精神作用物質使用による精神障害*)。
*アルコール、薬物などの精神作用物質の使用により起こる精神障害について認定するもの。精神病性障害を示さない急性中毒や身体依存が見られないものは、認定の対象にはならない。 ・精神作用物質使用による精神障害は、その原因に留意し、発病時からの療育や症状の経過を十分考慮すること。
高次脳機能障害とは、脳損傷が原因となる認知障害全般のことをいい、日常生活や社会生活に制限があるものが認定の対象となります。
てんかん
てんかん発作は、部分発作、全般発作、未分類てんかん発作などに分類されます。
また発作頻度も「薬物療法によって完全に消失するもの」から「難治性てんかんと呼ばれる発作の抑制できないもの」までさまざまあります。
A | 意識障害があり、状況にそぐわない行為を示す発作。 |
B | 意識障害を問わず、転倒する発作。 |
C | 意識を失い、好意が途絶するが、倒れない発作。 |
D | 意識障害はないが、随意運動が失われる発作。 |
障害の程度 | 障害の状態 |
1級 | 十分な治療にかかわらず、てんかん性発作のAかBが、月1回以上あり、常時の援助が必要なもの。 |
2級 | 十分な治療にかかわらず、てんかん性発作のAかBが、年に2回以上。または、CかDが月に1回以上あり、日常生活が著しい制限を受けるもの。 |
3級 | 十分な治療にかかわらず、てんかん性発作のAかBが、年に2回未満。または、CかDが月に1回未満あり、労働が制限を受けるもの。 |
てんかんは、「発作の頻度」と、さまざまな症状による「日常生活の制限」を考慮して認定されます。
知的障害
知的機能の障害が、発達期(~18歳まで)にあらわれ、日常生活に持続的な支障があり、何らかの特別な援助される状態のことをいいます。
障害の程度 | 障害の状態 |
1級 | 知的障害があり、食事や身の回りのことを行うのに全面的な援助が必要であり、会話による意思の疎通が不可能か著しく困難で、日常生活が困難で常時援助が必要とするもの。 |
2級 | 知的障害があり、食事や身の回りのことなどの基本的な行為を行うのに援助が必要であり、会話による意思の疎通が簡単なものに限られ、日常生活に援助が必要なもの。 |
3級 | 知的障害があり、労働が著しい制限を受けるもの。 |
知的障害は、知能指数のみだけではなく、日常生活のさまざまな場面での援助の必要度を考慮して、総合的に判断されます。
発達障害
発達障害は、自閉症、アスペルガー症候群、その他の広汎性発達障害、学習障害、注意欠陥多動性障害、その他これに類する脳機能の障害であってその症状が通常低年齢において発現するものをいいます。
障害の程度 | 障害の状態 |
1級 | 発達障害があり、社会性やコミュニケーション能力に欠如しており、著しく不適応な行動が見られることや、日常生活への適応に常時援助を必要とするもの。 |
2級 | 発達障害があり、社会性やコミュニケーション能力が乏しく、不適応な行動がみられることや、日常生活への適応には援助が必要なもの。 |
3級 | 発達障害があり、社会性やコミュニケーション能力が不十分で、社会行動に問題がみられることや、労働が著しい制限を受けるもの。 |
発達障害は、知能指数が高くても社会行動やコミュニケーション能力の障害により、対人関係や意思疎通を行うことが難しいため、日常生活に著しい制限を受けることなどを考慮して、総合的に判断されます。
発達障害は、知的障害を伴わない場合に、発達障害の症状により始めて受診した日が20歳以降の場合、その受診日が初診日になります。その場合、初診日の証明が必要となり、保険料の納付要件を満たす必要があります。
精神の障害に係る等級判定ガイドライン
平成28年9月に「精神の障害に係る等級ガイドライン」が施工されました。
障害基礎年金や障害厚生年金等の障害等級は、「国民年金・厚生年金保険 障害認定基準」に基づいて認定されていますが、精神障害及び知的障害の認定において、地域によりその傾向に違いが生じていることが確認されました。 こうしたことを踏まえ、精神障害及び知的障害の認定が当該障害認定基準に基づいて適正に行われ、地域差による不公平が生じないようにするため、厚生労働省に設置した「精神・知的障害に係る障害年金の認定の地域差に関する専門家検討会」において、等級判定の標準的な考え方を示したガイドラインや適切な等級判定に必要な情報の充実を図るための方策について、議論がなされました。 今般、当該専門家検討会の議論を踏まえて、精神障害及び知的障害の認定の地域差の改善に向けて対応するため、『国民年金・厚生年金保険 精神の障害に係る等級判定ガイドライン』等を策定し、本年9月1日から実施することとしました。
引用元:厚生労働省
障害等級の目安
精神の障害の意思の診断書にある「①日常生活状況能力の程度」と「②日常生活状況能力の判定」の評価の平均を組み合わせたものが、障害等級の目安になります。
(程度)(5) | (4) | (3) | (2) | (1) | |
(判定平均) 3.5以上 | 1級 | 1級または2級 | |||
3.0以上3.5未満 | 1級または2級 | 2級 | 2級 | ||
2.5以上3.0未満 | 2級 | 2級または3級 | |||
2.0以上2.5未満 | 2級 | 2級または3級 | 2級または3級非該当 | ||
1.5以上2.0未満 | 3級 | 2級または3級非該当 | |||
1.5未満 | 3級非該当 | 3級非該当 |
考慮すべき要素
「精神障害」「知的障害」「発達障害」の3つに区分し、共通する要素と障害ごとの要素について5つの分野別に書かれています。
①現在の病状または状態像
- 認定の対象となる複数の精神疾患が併存している時は、併合(加算)認定は行わず、諸症状を総合的に判断する。
- ひきこもりについては、精神障害の症状の影響により、継続して日常生活に制限が生じている場合はそれを考慮する。
精神障害 |
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知的障害 |
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発達障害 |
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(※1)陰性症状(残遺状態)が長期間持続し、自己管理能力や社会的役割遂行能力に著しい制限が認められれば、1級または2級の可能性を検討する。
(※2)適切な治療を行っても症状が改善せずに、重篤なそうやうつの症状が長期間持続したり、頻繁に繰り返している場合は、1級または2級の可能性を検討する。
②療養状況
- 通院の状況(頻度、治療内容など)も考慮する。
- 薬物治療を行っている場合、その目的や内容(種類、量など、期間)、服薬状況を考慮する。
- 通院や薬物治療が困難な場合、その治療やほかの治療の有無、内容を考慮する。
精神障害 |
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知的障害 | 著しい不適応行動を伴う場合や精神疾患が併存している場合は、その療養状況も考慮する。 |
発達障害 |
(※1)病棟内で、本人の安全確保などのために、常時個別の援助が継続して必要な場合、1級の可能性を検討する。
(※2)在宅で、家族や重度訪問介護などから常時援助を受けて療養している場合、1級または2級の可能性を検討する。
③生活環境
- 家族などの日常生活上の援助や福祉サービスの有無を考慮する*。
- 入所施設やグループホーム、日常生活の援助を行える家族との同居などの支援が定着した環境で、日常生活が安定している場合も、単身で生活するとしたときに必要となる支援の状況を考慮する。
- 独居の場合、その理由や独居になった時期を考慮する。
*独居でも、日常的に家族などの援助や福祉サービスを受けることで生活できている場合、それらの支援の状況や必要性を考慮し、2級の可能性を検討する。(家族等の援助や福祉サービスを受けていないが、その必要がある場合も含む)
精神障害 | ― |
知的障害 | ・在宅での援助の状況を考慮する。(※1) ・施設入所の有無、入所時の状況を考慮する。(※2) |
発達障害 |
(※1)在宅で、家族や重度訪問介護などから常時個別の援助を受けている場合、1級または2級の可能性を検討する。
(※2)入所施設において常時個別の援助が必要な場合、1級の可能性を検討する。
④就労状況
- 労働に従事していても、すぐに日常生活能力が向上したものとは捉えないこと。
- 現に労働に従事している場合、その療養状況を考慮することや、仕事の種類、内容、就労状況、仕事場で受けている援助の内容、他の従業員との意思疎通の状況などを、十分確認したうえで日常生活能力を判断する。
- 援助や配慮が定着した環境で安定した就労ができている場合、その援助や配慮がない場合に予想される状態を考慮する。
- 相当程度の援助を受けて就労している場合、それを考慮する。
- 就労の影響などで、就労以外の日常生活能力が著しく低下していることが客観的に確認できる場合、就労の場面と就労以外の場面の両方の状況を考慮する。
- 一般企業での就労の場合、月収の状況だけでなく就労の実態を総合的にみて判断する。(障害者雇用の就労は除く)
精神障害 |
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知的障害 |
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発達障害 |
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(※1)一般企業で就労している場合(障害者雇用の就労を含む)でも、仕事の内容が保護的な環境下での単純かつ反復的な業務であれば、2級の可能性を検討する。
(※2)一般企業で就労している場合(障害者雇用の就労を含む)でも、他の従業員との意思疎通が困難で、かつ不適切な行動がみられることなどにより、常時の管理・指導が必要な場合、2級の可能性を検討する。
(※3) 一般企業で就労している場合(障害者雇用の就労を含む)でも、執着が強く、臨機応変な対応が困難であることなどにより、常時の管理・指導が必要な場合、2級の可能性を検討する。
⑤その他
- 「日常生活能力の程度」と「日常生活能力の判定」に違いがあれば、それを考慮する。
- 「日常生活能力の判定」の平均が低い場合、各障害の特性に応じて、特定の項目に著しく偏りがあるため日常生活に大きな支障が生じる場合は、その状況を考慮する。
精神障害 | 依存症については、精神病性障害を示さない急性中毒の場合や、明らかな身体依存が見られるかを考慮する。 |
知的障害 |
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発達障害 |
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(※1)特別支援教育またはそれに相当する支援の教育歴がある場合、2級の可能性を検討する。
(※2)療育手帳の判定区分が中度以上(知能指数が概ね50以下)の場合、1級または2級の可能性を検討する。 それより軽度の判定区分である場合、不適応行動等により日常生活に著しい制限が認められる場合、2級の可能性を検討する。
(※3)療育手帳がない場合、幼少期から知的障害があることが、養護学校や特殊学級の在籍状況、通知表などから客観的に確認できる場合、2級の可能性を検討する。
(※4)療育手帳の判定区分が中度より軽い場合、発達障害の症状により日常生活に著しい制限が認められれば、1級または2級の可能性を検討する。
参考:精神の障害に係る等級判定ガイドライン (PDF)より作成
総合判定
「診断書」の記載内容、個別の「病歴・就労状況申立書」などを総合的に判定されます。
等級判定ガイドラインの障害等級の目安などの障害の程度については、医師の診断書がとても重要になります。
うちの子の場合、かかりつけの病院で診断書の作成をお願いをする際に、
毎回、問診表をを記入して、日常生活状況の程度や能力、現在の状況を提出します。
下記で、「病歴・就労状況申立書」の書き方を紹介していますので、参考までにどうぞ。
》【障害年金】20歳前傷病による障害基礎年金の病歴・就労状況申立書の書き方【体験談】
まとめ
「障害年金」とは、病気やけがによって障害の状態になったときに受け取ることができる年金のことをいいます。
精神疾患にかかってしまい、日常生活や仕事ができなくなってしまった場合でも、障害年金を受給できます。
審査が厳しく、審査期間が長いといわれていますが、認定されると生活の基盤にもなり大きな支えです。
精神の障害は、血液検査の数値や、心電図などの客観的な数値などでの障害の程度をあらわすことが難しいため、日常生活の状況などの生活上の困難さや原因、経過などが重要視されます。
そのため、医師の診断書は等級を判定するのにとても重要視されるので、障害の状態などを的確に伝えることが大切です。
下記で、障害年金の対象者や請求手続きなどについて、まとめてありますので参考までにどうぞ。
》【障害年金】対象者や等級、認定基準や請求手続きなどをわかりやすく解説します!