発達障害のある子どもや大人でも起きてしまう「二次障害」って知っていますか?
発達障害の特性だけでも生きづらさがあるのに、さらに日常生活に支障をきたし、自分ではどうしようもできない、さまざまな症状に本人はとっても苦しみます。
発達障害のある「二次障害」とは、日常生活で発達障害の特性の困難さから起こる無理解や否定、度重なる失敗や叱責などから心に傷つき、精神的な不調が日常生活の支障となることをいいます。
この記事では、3歳で発症した小児がんの闘病や、7歳で「発達障害」と診断を受けた子どもが、学校での対応によって二次障害を発症し引きこもりになった経験などから、
- 発達障害のある子どもの二次障害とは?
- 二次障害はどんな症状がある?
- 二次障害の原因は?
- 対処するポイントはある?
- うちの子の場合の体験談
- 二次障害は治る?
などについてご紹介します。
「二次障害」とは
発達障害のある子どもの「二次障害」とは、発達障害の特性から起こるさまざまな困難さから、極度のストレスやトラウマがきっかけとなって起きる症状のことをいいます。
発達障害のある子どもは、社会的適応能力に弱い面を抱えていますが、気づかれにくい障害であるために、通常の学級において、他の多くの子どもたちと同様の活動を常に求められます。
引用元:平成22ー23年度専門研究B「発達障害と情緒障害の関連と教育的支援に関する研究」
そのため、学習面や行動面、対人関係においてさまざまな適応困難な状態を示すことが多くみられます。
発達障害の本来の障害特性による学習面、行動面、対人関係におけるつまずきや失敗経験の積み重なり、まわりからの無理強いなどの不適切な対応の繰り返しは、精神的ストレスや不安感の高まり、自信や意欲の喪失、自己評価や自尊感情の低下などを引き起こし、さらなる適応困難を招いてしまうことがあります。
適応困難の状態には、学習面の難しさだけにとどまらず、不登校やひきこもり、反抗的な態度や反社会的行動等の症状として現れてくることもあります。発達障害のある子どものこれらの不適応の問題は、本来の障害特性である一次障害によるものだけでなく、適切な対応がなされないことなどによる二次障害によるものも多いと考えられます。
「二次障害」が起こると、発達障害の特性として持っている困難さに加えて、状況は悪化するため問題はより複雑になっていきます。
一次障害(一次的な問題)
発達障害の特徴や特性などの困難さを「一次障害(一次的な問題)」といいます。
【発達障害の種類】
自閉症スペクトラム症 | 対人関係が苦手で、強いこだわりがあるという特徴をもつ発達障害の1つ。 |
アスペルガー症候群 | 社会性やコミュニケーション、こだわりの強さや感覚過敏などの特徴がある発達障害の1つで、知能や言語の遅れがないもの。 |
注意欠陥多動性障害(AD/HD) | 「不注意」「多動」「衝動性」などの特徴がある発達障害の1つ。 |
学習障害(LD) | 全般的な知的発達に遅れはないが、特定の能力を学んだり行ったりすることなどに困難が起こる特徴がある発達障害の1つ。 |
トゥレット症候群 | 音声チックをともなう複数の運動チックなどが、 1年以上続く精神神経疾患のこと |
吃音症 | 言葉がスムーズに話せないなど、話を始めるときに最初の言葉に詰まったり、同じ音を繰り返したりする言語障害の1つ。 |
- 他者とのコミュニケーションが苦手。
- 自分では一生懸命頑張っているのに出来ない。
- そのことで親や学校の先生から叱責されてばかりいる。
- 「自分はダメなんだ」と自分に自信が持てなくなる。
- 社会生活がストレスとなりさまざまな疾患を発症する。
発達の不均等や偏りは1人ひとり違うし、外見からではわかりません…。なので、困った行動ばかり目につきやすく、叱責されることが多くなります。
下記に、発達障害の種類や特徴、特性などを紹介していますので、参考までにどうぞ。
》【発達障害】種類や特徴、特性などをわかりやすく解説します!
二次障害(二次的な問題)
「発達障害のある子どもの二次障害」は、体の不調、精神的な不調、行動面の問題などさまざまな症状があらわれてきます。また発達障害があるからといって、全ての人が二次障害を発症するわけではありません。周囲の適切な理解やサポートによって、環境など整えることで、二次障害を逃れる場合もあります。
二次障害の原因
二次障害の原因は、環境や関わり方などそれぞれ一人ひとり違います。
- 「頑張っているのにうまくいかない」「またやってしまった」という失敗体験の繰り返し
- 学習についていけないなどのクラスメートとの差や劣等感
- 周囲の大人からの叱責
- 友達からのからかいなど
- 「どうせ頑張ってもできない」
- 「何をやってもうまくいかない」
- 「また叱られる」
- 「どうせ自分はダメな子なのかな」
- 「自分が悪いのかな」
- 誰も信じられない
- 皆が敵だ
「二次障害」は、日々の傷つきや周囲との関係から、否定的な感情が積み重なって起こります。子どもが、つらい思いをする期間が長くなればなるほど起こりやすくなります。
二次障害の種類
「二次障害」には、自分に向けた情緒的問題としてあらわれる「内在化障害」、反抗的な行動や非行など他者への行動上の問題としてあらわれる「外在化障害」に分けられます。
内在化障害
不安や抑うつ、ひきこもりなど自分の内面に向けて情緒的問題があらわれる障害群のこと。
精神的な不安から、心と体にさまざまな不快な変化が起きるものです。
不安障害
パニック障害 | 突然理由もなく激しい不安に襲われ、心臓がドキドキしたりめまいが起こり呼吸が苦しくなる。 |
社会不安障害 | 人前で注目が集まるような状況などで強い不安や恐怖、緊張を感じる。 |
強迫性障害 | ・自分の意思に反してある考えが頭に浮かんで離れない強迫観念。 ・強迫観念で生まれた不安を振り払おうと何度も同じ行動を繰り返してしまう強迫行為。 |
全般性不安障害 | 毎日の生活の中で底知れない不安や心配を慢性的に持ち続ける。 |
適応障害
自分の置かれている環境(状況や出来事)に適応できない状態になることです。
- 不安や抑うつ、学校や職場での無断欠席、暴力的、破壊的行動を起こす。
- 不安を感じる状況になると、目まいや発汗、吐き気などが起きる。
うつ病
精神的ストレスや身体的ストレスなどから、脳がうまく働かなくなっている状態のことで、ものの見方や考え方が否定的になります。
- 精神的な症状(抑うつ気分/興味や喜びの喪失/意欲の低下/億劫感など)
- 身体的な症状(睡眠障害/倦怠感/食欲の減退/動悸/息苦しさなど)
心理的な原因によって、特定の器官に限定されて身体症状があらわれることです。
高血圧症、気管支喘息、胃潰瘍、過敏性腸症候群、頭痛、アトピー性皮膚炎、メニエール病など。
依存症
特定の物質や行動をやめたくてもやめられない、コントロールできない状態になることです。
- 物質依存症(アルコール/ニコチン/薬物など)
- 行動嗜癖(ギャンブルなどの行動や習慣に関連する)
引きこもり
長期間にわたり自宅や自室に閉じこもり、社会的な活動に参加しない状態が続くことです。
仕事や学校に行かず、かつ家族以外の人との交流をほとんどせずに、6か月以上続けて自宅にひきこもっている状態のこと。
外在的障害
反抗的な行動や非行など、外に向かって他者への行動上の問題としてあらわれる障害群のこと。
- 反抗(さからうこと)
- 暴力(乱暴な力)
- 家出(家族に無断で外出したまま、戻らないこと)
- 非行(社会的な規範に反する行為)
参考:発達障害の二次障害とは?その対処や予防法を詳しく解説!
二次障害の対処するポイント
「発達障害のある子どもの二次障害」は、日常生活での発達障害の特性の困難さから起こる無理解や否定、失敗や叱責などから心に傷をうけ、体の不調、精神的な不調、行動面の問題などのさまざまな症状が起こり、生活に大きな支障をきたすことです。
- かかりつけ医、主治医または専門医などに相談する。
- 発達障害者支援センターへの相談してみる。
発達障害の診断されて定期的に通院している病院や、支援センターなどでの相談をするのが一般的です。心理療法・投薬など、お子さんの症状や状態を注意深く見ながら見ていくことが大切になります。
二次障害が起きたときに、重要なのは心が傷つきとても苦しい思いをしているのは、子ども本人だということです。それぞれ一人一人が違うので、傷つくポイントや症状もさまざまなので、子どもの気持ちに寄りそうことを大切にしましょう。
- 子どもの気持ちを確認する。
- 子どもの気持ちを否定しない。
- 子どもの気持ちに寄りそうこと。
うちの子の場合の体験談
うちの子(かっくん)の場合、とてもつらい経験をしたことがトラウマとなり、今現在も「二次障害」に苦しんでいます。
ボクができないのが悪いんだ…。
- 担任の無理解、否定、叱責
- 問題行動への力づくの対応
- 問題児扱い、孤立感など
「不安障害」「適応障害」「強迫性障害」「社会不安障害」「引きこもり」「反抗」「暴力」などが症状として起こりました。
- 落ち着いていた家でも荒れるようになる。
- 人が信じられず心を閉ざして話せなくなる。
- 人の多い場所に行けなくなる。
- 病院に行くことも出来なくなる。
- 外出できなくなる。
こうして気持ちが不安定で、身体的、心理的で日常生活に支障のある症状に苦しむことになります。
どんなに評判の良い医師や臨床心理士へ相談しに連れていっても、心を閉ざしたままで症状が悪化するので、無理やり連れて行くことはしないようにしました。
そして起こる症状のひとつひとつに寄り添い、子どもの気持ちを見守ることを心がけています。
どんなに家庭で工夫をして適切な対応を心がけても、学校で不適切な対応をされると、子どもは混乱しパニックを起こします。担任の教師の本当に理解のあるかないかによっては、子どものその後の人生に大きく影響があります!
下記で、発達障害のある子どもの問題行動について紹介していますので、参考までにどうぞ。
二次障害は治るの?
二次障害を発症してしままったら治るのかどうかが心配になりますね。二次障害の症状は、1人ひとり違うため断言はできません。
実際の子どもの経験から、環境を整えたり症状によっては薬物療法なども必要になります。そうして、子どもの気持ちに寄りそいながら、時間をかけてゆっくりと対応していきますが、ようやく落ち着いて症状が和らいだとしても、また気持ちが不安定になると再び症状があらわれます。
二次障害を発症するということは、それだけ心が傷ついているということなので、気持ちの安定を保つことが大切です。
本人も、自分ではどうすることもできず、苦しい状態が続くことになります。できるだけ二次障害を発症しないように周りの理解や、適切な対応がとても大切です。
まとめ
「発達障害のある子どもの二次障害」とは、発達障害の特性の困難さから起こる無理解や否定、失敗や叱責などから心が傷つき、体の不調、精神的な不調、行動面の問題などさまざまな症状があらわれることです。子どもは失敗経験の積み重ねにより、心が傷つき自分を否定し、とても苦しい思いをしています。
「もしかしたら二次障害かも?」と思ったときは、定着や悪化しないようになるべく早く対応しましょう。家族や学校だけでは、問題が深刻化してしまうこともあるため、地域の医療や相談機関にも早期に相談しましょう。
「二次障害」を発症しないように、関わる大人が発達障害の特性の困難さからのストレスを理解し、適切な対応を心がけることが大切になります。
- 子どもの特性からの困難さに気づいて理解すること。
- 子どもの生きやすい環境をつくること。
- 子どもの「できること」に注目し、成功体験を積み重ねること。
子どもが「自分は大切にされている」と実感して、周囲からの理解と受け入れを感じることができれば、子どもは自己肯定感を高めることができます。子どもが自分を大切にして自信がもてるようになると、少しでも生きやすい環境を作ることができるようになります。
関わる大人によって、困難があっても乗り越えて生きていく力を育てられるということですね。