障害年金の請求手続きは、審査が厳しく審査期間も長く、「病歴・就労状況申立書」の作成が大変だといわれています。
実際に私も、子どもの障害基礎年金の手続きをするにあたり、
病院の方や先輩ママたちに「大変だよ。」といわれました。
- インターネットで調べてみた
- 専門書で勉強した
書き方のポイントはあるけど、細かな情報がなくて困りました。
こういった複雑な書類作成などから、専門の方に有料で頼まれる方も多いのでしょう。
だけど、子どもの障害や病気、数々のトラブルや出来事を共に悪戦苦闘しながら過ごし、一番に理解しているのは自分だという思いもあり、自力で手続きをすることにしました。
この記事では、3歳で発症した小児がんの闘病で晩期合併症が残り、7歳で発達障害と診断され、二次障害を発症し引きこもりになった子どもの障害基礎年金の手続きをした経験から、
- 20歳前傷病による障害基礎年金とは?
- うちの子の場合の体験談
- 病歴・就労状況申立書の書き方
などについてご紹介します。
「20歳前傷病による障害基礎年金」とは?
「20歳前傷病による障害基礎年金」とは、20歳前の年金に加入していない時期に、初診日のある方が対象となる障害基礎年金のことをいいます。
疾病にかかり、又は負傷し、その初診日において二十歳未満であつた者が、障害認定日以後に二十歳に達したときは二十歳に達した日において、障害認定日が二十歳に達した日後であるときはその障害認定日において、障害等級に該当する程度の障害の状態にあるときは、その者に障害基礎年金を支給する。
引用元:国民年金法第三十条の四
- 初診日が20歳未満にある。
- 障害の程度が1級か2級である。
初診日から1年6カ月経過した日が20歳到達日*の後にある場合 | その障害認定日 |
初診日から1年6カ月経過した日が20歳到達日*の前にある場合 | 20歳に達した日 |
*20歳到達日とは、20歳の誕生日前日のこと。
20歳前の傷病による障害基礎年金は、一定の所得制限があります。
全額支給停止の制限額 | 4,721,000円 |
半額支給停止の制限額 | 3,704,000円 |
初診日が20歳前で、
- 厚生年金加入している方の場合、保険料納付要件を満たせば、通常の障害厚生年金対象となります。
- 満たしていない場合は、20歳前の傷病による障害基礎年金の対象となります。
下記で、障害年金についてわかりやすく解説していますので、参考までにどうぞ。
》【障害年金】対象者や等級、認定基準や請求手続きなどをわかりやすく解説します!
うちの子の場合
うちの子(かっくん)の場合の体験談をご紹介します。
- 3歳「小児がん(肝芽腫)」を発症。
- 化学療法と手術を治療するが入退院を繰り返す。
- 4歳「特別児童扶養手当」(2級認定)
- 再発を繰り返し、自家末梢血幹細胞移植をする。
- 長期の化学療法によりさまざまな晩期合併症が残る。
- 6歳「身体障害者手帳」を取得。(薬剤性感音性難聴、4級)
- 1年生(6歳)「特定できない広汎性発達障害」と診断受ける。
- 2年生(7歳)「療育手帳」を取得。(判定B-2)
- 5年生(11歳)「特別児童扶養手当」(1級認定)
- 5年生(11歳)「障害児福祉手当」申請→認定。
- 15歳「精神保健福祉手帳」を取得。(2級)
- 20歳「特別児童扶養手当」「障害児福祉手当」資格喪失。
- 20歳「障害基礎年金」(1級認定)
- 20歳「精神保健福祉手帳」を取得*。(1級)
*(障害年金受給(1級)の決定により、年金証書での等級変更申請。)
下記で、不登校や二次障害について紹介していますので、参考までにどうぞ。
》【発達障害】子どもが不登校!きっかけや原因など対処するポイントなどを解説【うちの子の場合の体験談】
》【発達障害】二次障害にはどんな症状がある?発症すると治りにくい【うちの子の場合の体験談】
準備したこと
うちの子(かっくん)が、18歳になる頃に将来の不安が漠然とやってきました。
先輩ママなどから何となく聞いていましたが、「大変だ」という印象があったので、
本格的に準備を始めることにしました。
専門書で勉強する
まず、障害年金の専門書を購入し勉強することにしました。
- あてはまる障害の種類、等級などの認定基準に付箋をする。
- 請求手続きの流れなどを確認する。
私は、紙の本でないと頭に入らないタイプなので、下記の本を参考にしました。
障害年金についてのしくみから、認定基準や請求者手続きの流れや、納得できない結果の場合などについても細かく書かれてあり、とっても参考になりました。
※私は3訂版でしたが、新しく4訂版があります。
記録やメモ書き、資料をまとめる
次に、「病歴・就労状況申立書」が大変ということを聞いていたので、これまでの闘病の記録や病院などの結果、日常で起こったことのメモ書き、行政からの書類などをまとめました。
- 3歳からの闘病の記録(採血結果・日記・お薬手帳など。)
- 日常生活のメモ書き(スケジュール帳に書き込んだメモなど。)
- 行政からの書類(自治体によって認定されてきた証書や書類など。)
ズボラな性格の私は、
- 特に置く場所などを決めていなかったこと
- 引っ越しなどもあったこと
- あちこちから書類などが出てくる状況
まずは集めて整理する必要がありました。
パソコンに書き起こす
整理した書類やメモなどをもとに、パソコンで時系列と出来事を書き起こす作業をしました。
- ワードやメモなどの機能を使う。(無料で使えるものがある。)
- 事細かに書き起こす。(年月日、病院名、学校名、出来事、処方された薬(量)、行政の手続きの申請や更新など。)
- 出来上がったら印刷してファイルに閉じる。
うちの子の場合は、3歳で発症した肝芽腫(小児がん)の治療により、晩期障害が残ったことから始まっているので、3歳から19歳までの16年分を書き起こしました。
パソコンが得意ではないので時間がかかりましたが、自分のペースで作成することができたので、18歳から始めてよかったと思います。
主治医に話をしておく
うちの子の場合は、疾患によって2か所の病院に、それぞれ月一回受診していました。
それぞれの主治医に、1年前ぐらいから障害年金の話をすることで診断書の作成のお願いをしました。
- 聴覚障害
- 精神障害
- その他の内部疾患
先輩ママからのいろんな話によると、「○○病院では通らない。」などの噂話があるようです。ですが私は、「小さい時からの子どもを診ている」「信頼関係を築けている」ということを大事にして、これまでのかかりつけの主治医にお願いしました。
年金事務所で相談する
必要な書類をもらうため年金事務所の窓口に相談しました。
窓口に行くと、予約対応だということでその場で後日の予約日を決め、子ども本人ではないため委任状を用紙をもらい、予約日に改めて相談しました。
- 予約対応なので、電話で予約する。
- 子ども本人が行けない場合は、委任状が必要。
うちの子の場合は、重度の精神障害があり引きこもっているので、委任状で私が相談に行きました。
担当の社労士さんがとてもわかりやすく対応してくださり、とても安心して相談することができました。
事前に専門書で勉強していたこともあり、診断書の種類についても、子どもに合った診断書を用意してくださいました。
「病歴・就労状況申立書」の書き方
うちの子の場合の「病歴・就労状況申立書」の書き方を紹介します。
①傷病名
この傷病名は、医師の診断書に書いてある病名と同じにします。
医師の診断書が出来上がって*から、記入します。
これは年金事務所で相談したときに教えてもらいました。
*【診断書の注意点】
障害認定日(初診日から1年6カ月を経過した日)が、
20歳到達日より前にある場合 | 20歳到達日 | 障害の状態を認定する日 |
20歳到達日より後にある場合 | その日 |
上記の日で、受給権発生日⁑とする請求をする場合は、診断書は、それぞれの日の前後3カ月以内の障害の状態で作成されたものが必要になります。
⁑受給権発生日とは、受給開始年齢に到達した日(誕生日の前日)のことをいいます。
20歳になった診断書を提出する必要がありますので、診察や検査は誕生日の3カ月前でもいいのですが、診断書の作成日は子どもの誕生日以降で作成してもらいましょう。
また、診断書は間違いなどもあるため、できるだけ病院の窓口で受け取りましょう。
うちの子の場合、
子どもの誕生日の作成日でしたが、年齢が19歳と書かれていました。その場で訂正してもらいましたが、郵送だったらもっと時間がかかっていたと思います。
②発病日
病気が発病した日のことです。
病気が発覚するきっかけになる病院を受診した日を、記入します。
うちの子の場合は、「お腹が痛い」といったので、近所の病院に受診した日のことを記入しました。
この後、2つの病院の紹介を経て、次の日に精密検査をして病名が診断されました。
③初診日
障害の原因となった傷病について、医師の診断を受けた日のことです。
障害が複数ある場合は、それぞれの診断を受けた日を記入します。
うちの子の場合は複数の障害があり、それぞれの疾患で3つの種類の診断書が必要でした。
そのため、それぞれの疾患での3つの種類での病歴・就労状況申立書が必要でした。
④受診の有無など
いつ、どこの医療機関を、受診をしたのか、してないかということです。
受診している機関 | 通院機関/受診回数/入院期/治療経過/医師から指示された事項/転医・受診中止の理由/日常生活状況/就労状況など |
受診していない期間 | 理由/自覚症状の程度/日常生活状況/就労状況など |
同一の医療機関を長期間受診している場合 | その期間を、3年~5年ごとに区切って記入。 |
医療機関を長期間受診していなかった場合 | |
発病から初診までが長期間の場合 |
この④の部分は、次の⑤の状態や状況を記入する部分と大きく関係してきます。
⑤状態や状況など
病気を発症したときの状態や状況、医療機関の受診や経過など、④とあわせた期間に沿って詳しく説明することをいいます。
発症したときの状況や、初診までの経過などを詳しく記入するということです。
- 知的障害と発達障害の場合は、出生時からの状況などを、記入します。
- その他の先天性疾患で症状がなかった場合は、症状が出た時点からの状況を、記入します。
うちの子の場合は、3歳で肝芽腫という小児がんの治療によって、晩期障害が残りました。
- 出生時の身長体重
- 1歳6ヶ月健診などでの異常がなかったこと
- 3歳からの病気発覚した時点からのこと
事細かく記入をしました。
〇年〇月〇日から ×年×月×日まで 〇受診した 〇×病院 | △年△月△日、〇〇〇〇g、××㎝で生まれる。1ヶ月~1歳6ヶ月、健診異常なし。 3歳を過ぎた〇年〇月〇日、腹痛があり、○○病院を受診するが、△△病院を紹介され、さらに〇×病院を紹介される。 検査の結果、「肝芽腫」と診断され、肝臓の大部分に腫瘍があるため、化学療法により小さくして手術をする。 〇年〇月〇日、治療開始。(抗がん剤名、期間、状態などを細かく記入。) |
このように医療機関や、枠に書ける期間などに分けながら、
- 子どもの19年分の治療経過
- トラブルや出来事
- 薬の処方や
- 医師からの診断など
を事細かに記入しました。
書き方には正解はなく、1人ひとりの状態や状況などを事細かに書くことが大切です。
「病歴・就労状況申立書」(裏面)
就労・日常生活状況についての記入項目があります。
- 就労状況
- 日常生活状況
- 障害者手帳の有無
うちの子の場合は、
- 就労していない理由のその他にその理由
- 日常生活状況
- 障害者手帳の有無
を記入しました。
病歴・就労状況申立書(続紙)
子どもの状態・状況をまとめるのは至難の業です。
できるだけ、どんな経緯をたどって現在があるのかも審査していただきたいと思い、続紙を使いました。時系列に沿って起こった出来事を、事細かに詳しく記入します。
うちの子の場合は、
- 病歴・就労状況申立書(続紙)を3枚追加
- 病歴・就労状況申立書
と合わせて計4枚作成しました。
パソコンの機能を上手く活用しよう
「病歴・就労状況申立書」「病歴・就労状況申立書(続紙)」は、日本年金機構のホームページからダウンロードすることができます。
また、Excelでもダウンロードすることができますので、パソコンでも作成することができます。
うちの子の場合は、無料でPDFに入力できるGoogle Driveを利用して作成しました。
手書きで書いてみたりもしましたが、小さな字を書くことができず、パソコンで作成することにしました。
パソコンは、文字の大きさ、間違えた時の修正のしやすさなどもあって、おススメです。
参考:Googleドキュメント、Google DriveでPDFを編集する方法
参考:おすすめの無料で利用できるPDF編集ソフトベスト10を紹介!
まとめ
障害年金の請求手続きは、審査も厳しく複雑で難しいことや、「病歴・就労状況申立書」を書くのが大変だと聞いていました。
そこで、子どもの請求手続きのために勉強や準備などをしてきた経験と、病歴・就労状況申立書の書き方をご紹介しました。
この書き方には正解はなく、一人ひとりの状態や状況を事細かに記入することがとても大切だと思います。
うちの子の場合は感染症の影響もあり、審査結果が届いたのは4ヶ月ぐらいかかりましたが、「1級」の認定を受けることができました。
少しでも参考になれば幸いです。