【小児がん】晩期合併症って何?障害の種類や症状などをわかりやすく解説【体験談】

晩期合併症とは
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晩期合併症」って知っていますか?

「合併症」はわかるけど、「晩期」とは何のことだろう?

晩期合併症」とは、小児がんの放射線療法や化学療法、外科手術などの治療による副作用などで、治療中や数年経って起こる身体的や精神的な合併症のことで、「晩期障害」ともいいます。

小児がんは、さまざまな研究により医学も進歩し治療効果が高く治るようになってきました。

成長過程の子どもにとっては、長期入院や化学療法などの治療は、身体的や精神的に大きな負担になります。

この記事では、3歳で発症した小児がんの闘病や、7歳で発達障害と診断を受け、二次障害を発症し引きこもりになった子どもとの波乱万丈な経験から、

  • 晩期合併症とは?
  • 晩期合併症の種類は?
  • 晩期合併症の症状は?
  • うちの子の場合の体験談

などについてご紹介します。

晩期合併症とは?

治療が終了して数カ月から数年後に、がん(腫瘍)そのものからの影響や、薬物療法、放射線治療など治療の影響によって生じる合併症のことです。晩期合併症は、がんの種類、発症の年齢や部位、治療法の種類や程度によってさまざまで、身体的な症状や二次がんの発症のみならず、精神的・社会的な問題なども含まれます。そのため、がんの治療終了後も、個別の状況に合わせて長期の経過観察(フォローアップ)がなされることがあります。

引用元:国立がん研究センター がん情報サービス
小児科の医師
小児科の医師

小児がんの晩期合併症は、がんの種類や治療内容、その治療を受けたときの年齢などに関係し、年齢に伴って発症したり、治療終了後何⼗年も経過してから症状が起こることもあります。

晩期合併症の種類

  • 成⻑発達の異常…⾝⻑発育障害、無⽉経、不妊、肥満、やせ、糖尿病など。
  • 中枢神経系の異常…⽩質脳症、てんかん、学習障害など。
  • その他の臓器異常…⼼機能異常、呼吸機能異常、肝機能障害、肝炎、免疫機能低下など。
  • ⼆次がん…⽩⾎病、脳腫瘍、甲状腺がん、その他のがんなど。
小児科の医師
小児科の医師

「晩期合併症」に適切な対処をするために、定期的な診察と検査による⻑期間のフォローアップが必要になります。

晩期合併症の症状

どんな症状が起こることがあるのか紹介します。

成長ホルモン分泌障害

頭部に放射線を照射することで、頭の中の脳下垂体から分泌される成長ホルモンが抑制されるため起こることがあります。また、抗がん剤の治療や、造血幹細胞移植の前処置の治療によって起こる場合があります。

  • 低身長…平均身長より-2SD(標準偏差値の 2 倍)以上低いこと。

成長障害

抗がん剤治療の副作用などで、長期間食欲不振が続くと痩せたり、放射線照射や副腎皮質ステロイドなどの治療によって肥満になることもあります。

  • やせ…急激に痩せてしまう。
  • 肥満…脳の中の視床下部に障害が残ると肥満になる場合がある。

内分泌障害

放射線治療やアルキル化剤の抗がん剤(エンドキサン)によって起こることがあります。

  • 不妊…【男子】無精子症、【女子】不妊

甲状腺機能障害

【甲状腺に障害が残る場合】
  1. 甲状腺の腫瘍で甲状腺を切除した場合
  2. 首などに放射線照射を受けた場合
  3. 造血幹細胞移植の前処置に全身に放射線をあてた場合
  4. 首以外の胸部や頭部に放射線照射を受けた場合

中枢神経障害

放射線治療や抗がん剤によって、脳のさまざまな機能にも影響が起こることがあります。

  • 麻痺、運動障害、けいれん、言語障害、視神経障害による視力低下、知能障害、精神障害など。
  • 白質脳症、てんかん、脊髄炎、もやもや病、脳動脈瘤など。

心機能障害

晩期合併症の中で、生命に関わる重大なものです。

【アントラサイクリン系抗がん剤】
  • ダウノルビシン(ダウノマイシン)
  • ドキソルビシン(アドリアマイシン)
  • イダマイシン(イダルビシン)
  • エピルビシン(ファルモルビシン)
  • ピラルビシン(THP)(テラルビシン、ピノルビン)  

これらの抗がん剤の使用する量が多くなるほど体の中に蓄積し、心臓に毒性を起こす場合があります。

  • 拡張型心筋、心筋硬塞など

肝機能障害

造血幹細胞移植後の慢性 GVHD や、輸血による肝炎ウイルス感染後の肝障害などが起こることがあります。

  • 慢性肝炎、肝硬変など

胃腸障害

腹部に放射線照射を受けた場合、慢性の炎症から吸収不全が起こることがあり、胸部への放射線照射が原因で、食道の狭窄が起きることもあります。

腎障害

放射線照射や、プラチナム製剤の抗がん剤(シスプラチン)の治療によって起こることがあります。

  • 高血圧、腎機能障害など

呼吸器障害

ブレオマイシン、BCNU、シクロフォスファミドなどの抗がん剤の治療によって起こることがあります。

  • 肺線維症、閉塞性細気管支炎、肺の線維化など

二次がん

放射線や抗がん剤の治療が、次のがんを引き起こす場合があり、同じ種類のがんができる再発ではなく、治療に関連して新たにできるがんが起こることがあります。

  • 固形腫瘍、白血病など
小児科の医師
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晩期合併症の症状は、ひとりひとり違いますので、長期にわたりフォローアップしていくことが大切です。

【参考資料】がんの子どもを守る会 リーフレット『⑫晩期合併症』

うちの子の場合

うちの子(かっくん)に症状が出始めたのは、治療開始から1年以上経ち、自家末梢血幹細胞移植を終えた頃からでした。

 感音性難聴

内耳や、その奥の中枢の神経系などに障害がある場合に起こる難聴のことで、高音域の音が聞こえにくく、複数の音を同時に聞いた時、特定の音を聞き分けたりすることが難しい特徴があります。

高い音が聞こえにくくなったので、私との会話がうまく行かないことから始まりました。

聞こえないからと大きな声で話すと、「うるさい!」と言われたり、伝わらないことが増えてトラブルになることも多くありました。

  • インターフォンや体温計、電子レンジなどの高音は聞こえない。
  • 語音明瞭度が低く、言葉がはっきり認識できない。
  • 補聴器などを使用しても効果がない。
  • 言葉を習得してからの難聴で、発語には問題がないため、聴覚障害に気づいてもらえない。
  • 低めの声で話す。
  • 伝わらない時は、文字を書きながら話す。
  • 口の動きを見せる。(口の動きで読み取るため)

身体障害者手帳の4級を取得。

後天性甲状腺機能低下症

血中の甲状腺ホルモン作用が必要よりも低下した状態のことで、無気力、疲労感、むくみ、寒がり、体重増加、動作緩慢、記憶力低下、便秘などの症状があります。

かっくんの場合は、肝芽腫の治療1年後、定期の検査入院でわかりました。

  • 体がだるい。
  • 声がかすれる。

チラーヂン錠の適量を内服すること。

低身長

平均身長より-2SD以下で、小学低学年の身長です。

  • 小学6年生で身長が伸びていないのに骨年齢が進んでいる。
  • 思春期早発症のような思春期も問題等もあり、性腺抑制療法を始める。
  • 20歳で、治療終了。
治療開始12歳138.9㎝
治療終了20歳150.6㎝
現在21歳      151.3㎝(現在成長中)

命に関わることではありませんが、本人と話し合って決めました。

効果はあまり感じられませんが、これから自分の男性ホルモンが出てきて、どう成長していくのかを注意深く見ていく必要があります。

  • 月1回のリュープリン注射。
  • プリモプランの内服。(副作用があり、ほとんど飲めませんでした。)

性腺抑制療法…大人の身長を十分高くするためには思春期を遅らせる治療のこと。

腎機能障害

尿検査では

  • 潜血がある。
  • 腎臓の機能が低下して、推算糸球体濾過量(eGFR)が60%ぐらいの状態。
  • 体調が悪いと腎機能にも影響し、脱水症になる。

2ヶ月に一度の定期受診で様子をみています。

水分補給をこまめにする。

広汎性発達障害、知的障害

化学療法や自家末梢血幹細胞移植の後、頭部MRIの検査で「脳が委縮している」と指摘されたことがありました。

ただその時は、がん治療が最優先であったことや、医師も「特に心配はいらない」ということで、特に何もしませんでした。

その後の定期的なMRIでは「異常はなし」でした。

はっきりと確定はできないけど、化学療法などの小児がん治療の後遺症の可能性があると思っています。

【知的障害】

知能指数はギリギリボーダーラインだが、生活面や行動面で軽度の知的障害と判定される。

【特定できない広汎性発達障害】

こだわり、コミュニケーションがとれない、感覚過敏‥など。

療育手帳のB-2、精神保健福祉手帳の1級を取得。

下記で、発達障害と診断されるまでや発達障害について紹介しているので、参考までにどうぞ。

》【発達障害】うちの子、何かが違う?と感じた気づきの特徴やポイントを解説【体験談】

》【発達障害】種類や特徴、特性などをわかりやすく解説します!

まとめ

晩期合併症とは、小児がんの放射線療法や化学療法、外科手術などの治療による副作用などで、治療中や数年経って起こる身体的や精神的な合併症のことです

この晩期合併症(晩期障害)は、治療の程度によっては起こらない場合もあり、長期にわたって強い化学療法などの治療を行った場合はリスクが高くなります。

  • 年齢に合わせて発症しやすくなる。
  • 治療終了して何⼗年も経過してから症状があらわれることもある。

今では抗がん剤もさまざまな種類も開発され、がん細胞にだけ効果があるものなどもありますが、多くの抗がん剤は正常な細胞も壊してしまいます。障害が残ることは、本人の生活に影響を与え、生きにくさを抱えることにもなります。

母の気持ちとしては、障害が残ったとしても「命があること」「今も同じ時間を過ごせていること」に感謝しています。かっくんの楽しそうな「ケタケタ」と笑っている姿が一番の癒しになっています。