「肝芽腫(かんがしゅ)」って知っていますか?聞いたことがないし、知らない方がほとんどではないでしょうか。
実際に私も、病気の告知をされるまで全く知りませんでした。
「肝芽腫」とは小児がんの一種で、簡単に言うと「子どもの肝臓のがん」ということです。
「が、がん?」と衝撃を受けてしまうのも無理はありません。
「がん」=「治らない」というネガティブなイメージが誰にでもあるのではないでしょうか。だけど、医学の進歩は素晴らしく、現在ではさまざまな研究がなされ有効な治療方法なども確立されていて、小児がんは治るようになってきました。
この記事では、3歳で発症した肝芽腫の闘病や、7歳で発達障害と診断をされ、二次障害を発症し引きこもりになった子どもとの波乱万丈な経験から、
- 肝芽腫とは?
- 肝芽腫の症状は?
- どんな検査をする?
- 肝芽腫の治療方法は?
- うちの子の場合の体験談
などについてご紹介します。
肝芽腫とは
「肝芽腫」とは、子どもの肝臓にあらわれる悪性腫瘍の1つです。
肝芽腫とは、小児の肝臓に発生した悪性腫瘍の一つで最も頻度の高いものです。肝炎ウイルスを原因として発症する成人の肝細胞がんも肝臓に発症する悪性腫瘍ですが、肝芽腫は肝細胞がんとは異なる病気です。 肝芽腫は3歳までに発生することが多く、発症率は数万人~数十万人に1人弱と考えられています。日本全国で見ても肝芽腫の新規発生患者数は年間で30〜40人程度だと考えられており、非常にまれな小児悪性腫瘍の一つです。
引用元:肝芽腫について|メディカルノート
「肝芽腫」は、3歳までに発症することが多く、肝臓に腫瘤ができることから「お腹が大きい」「お腹にしこりが触れる」などの症状があらわれる場合があります。
原因
「肝芽腫」の原因は、未知の部分が多いため不明であり、肝芽腫の発生要因はわかっていません。肝芽腫の発生には、遺伝子レベルによる異常が関係していると考えられています。
- 生まれた時の体重が非常に低い。
- 家族性腺腫性ポリポーシス の家系。
- ベックウィズ-ヴィーデマン症候群を有する。
症状
「肝芽腫」が、肝臓の中にできるとじわじわと肝臓が大きくなりますが、よほど大きくならない限りは、外見からは分かりにくく気づかないことが多いです。
- お腹に硬いしこりが触れる。
- お腹がぽっこりとふくれる。
- 痛みや発熱がある。
- 食欲減退や体重減少がある。
肝臓は、沈黙の臓器でもあるため、痛みはほとんどありません。
検査と診断
「肝芽腫」の検査の方法や診断、病期分類について紹介します。
血液検査
AFP(「エー、エフ、ピー)…α-フェトプロテインの略。
「AFP」とは、肝芽腫の腫瘍マーカーのことで、高い値を示します。
AFPの正常値 10ng/ml以下
ただし、AFPは別の疾患でも上昇することがあるため、AFPのタイプを調べることもあります。
このほか、肝機能や白血球、赤血球、血小板なども調べます。
腫瘍が小さくなれば、AFPの値も下がってきます。
画像検査
「肝芽腫」では、画像検査によって病気の部位を確認をすることができ、門脈や胆管などの位置関係を確認したり、転移の有無を確認することができます。
レントゲン | 腹部の臓器のX線検査。腫大した肝臓や、石灰化を見つけることができる。 |
超音波検査 | 超音波で肝臓の中の腫瘍の確認。肝臓内の静脈や門脈などの血管と腫瘍の関係、下大静脈や胆管なども確認できる。 |
CT | 胸部と腹部にCTスキャンで腫瘍の確認する。胸部は肺への転移の有無を調べる。 |
MRI | 磁気を用いて、肝臓の腫瘍や血管などの精細な画像検査をすることで、腫瘍内部の出血や肝芽腫の状態を確認する。頭部のMRIは、脳への転移の有無を調べる。 |
骨シンチ | がんが骨に転移していないかを調べる。骨の炎症、骨折など骨の病気を調べる。 |
生検
がん細胞を顕微鏡で調べるため、細胞や組織を採取することです。
腫瘍の切除手術をする場合には、そのときに細胞や組織を採取し、病理医が採取されたサンプルを顕微鏡で観察し、肝がんがあるかどうかを調べます。
太い針を、お腹の外から刺して腫瘍の一部を抜き取ることもありますよ。
病期分類
「肝芽腫」の手術実施前の病期分類は、肝臓全体を4つの区域に分け、区域の内外への腫瘍の拡がり方を基準として分類したものを「PRETEXT分類」と呼びます。
PRETEXT I | 肝臓の4区域の1つのみにがんが認められる。 |
PRETEXT II | 肝臓の4区域の隣り合う2つにがんが認められる。 |
PRETEXT III | 肝臓の4区域の隣り合う3つにがんが認められる、または肝臓の4区域の隣り合わない2つにがんが認められる。 |
PRETEXT IV | 4区域の全てにがんが認められる。 |
このほかに、「肝外進展」と「遠隔転移」の有無の確認します。
V | 下大静脈または全ての肝静脈内へ腫瘍が入り込んでいる場合。 |
P | 門脈本幹、または左右両方の門脈内に腫瘍がある場合。 |
E | VやP以外の肝外進展がある場合。 |
R | 腫瘍破裂がある場合。 |
M | 遠隔転移がある場合。 |
化学療法を始める前に、聴力検査、心機能検査(心エコー・心電図)、腎機能検査(尿検査)、骨髄検査(マルク)などの検査をします。
治療
「肝芽腫」は、JPLT(日本小児肝癌スタディグループ)によるプロトコールがあり、腫瘍の種類や病期分類などのさまざまなことを考慮して、総合的に治療方法を判断していきます。
手術
手術によって、がんを摘出します。
肝部分切除術 | 肝臓のがんに侵されている部分を切除する手術。 (切除方法:組織の楔状切除、肝葉、肝区域切除など。) |
全肝切除術/肝移植 | 肝臓全体を切除し、ドナーから提供された健康な肝臓を移植する治療法。 (肝移植:がんが肝臓の外部にはひろがっておらず、かつ肝臓のドナーがみつかった場合に行う。肝臓の提供を待つ場合、必要に応じて他の治療を実施。日本での生体肝移植は、2010年から保険適応。) |
転移巣切除 | 肝臓の外部(周辺組織や肺、脳など)へ転移したがんを切除する手術。 |
ほとんどの場合、化学療法と併用して治療します。
- 「術前補助療法」…腫瘍を小さくして摘出しやすくしたり、手術による腫瘍細胞の飛散を防ぐために、手術の前に化学療法を実施する。
- 「術後補助療法」…全てのがんを切除したとしても、残っているがん細胞を全て死滅させようと、術後に化学療法を実施する。
化学療法
抗がん剤を使って、がんを治療することをいいます。
抗がん剤 | がん細胞の増殖を抑えたり、再発や転移を防いだりする効果があり、より広い範囲に治療の効果が及ぶことが期待できる。転移または転移の可能性がある場合や、広範囲に治療が必要な血液やリンパのがんなどにも有効。 |
化学療法は、抗がん剤のみの治療を行うこともあれば、手術治療や放射線治療などの他の治療と抗がん剤治療を組み合わせて行うこともあります。
化学療法は、1種類の薬剤だけを使う場合と、複数の種類の薬剤を組み合わせ治療する場合があります。薬の種類も、飲み薬のタイプや、点滴や注射のタイプの種類があります。
子どもの場合は、中心静脈カテーテルを挿入し治療することが多いです。
- 血管確保の負担が大きい。
- 頻繁に採血や輸血などを行うため、ルート確保が困難になる。
- 子どもの日常生活の負担にならない。
放射線治療
放射線を利用して、がん細胞を死滅させる治療法のことをいいます。
外照射療法 | 体の外に設置された装置を使用し、がんに放射線を照射する方法。 |
内照射療法 | 針やシード、ワイヤーやカテーテルなどの器具を使用し、がんに放射性物質を直接発生させる方法。 |
放射線療法は、治療中のがんの種類や病期分類によって違いますので、実施しない場合もあります。
医師と保護者によるインフォームドコンセントを行い、治療方法などをきめていきますが、治療法に納得いかなければセカンドオピニオンも検討しましょう。
うちの子の場合
うちの子(かっくん)に、「肝芽腫」が見つかったのは、3歳になったばかりの頃でした。
発症
- お腹が痛いと訴えがある。
- 発熱や下痢がなかったので、かかりつけではなく胃腸科内科に行く。
- 超音波検査で肝臓が腫れているかもしれないといわれ、少し大きな病院を紹介される。
- 少し大きな病院で血液検査、CT検査をするが、さらに精密検査が必要と大学病院を紹介される。
もっと大きな病院で、詳しく検査をしてください。
その少し前から、発熱や風邪症状が繰り返しあり、何か関係があったのかな。
診断と告知
- 大学病院で、血液検査、CT、MRI、超音波検査、骨シンチなどの精密検査をする。
- その結果「肝芽腫」と診断される。
- 肝臓全体に腫瘍がある「PRETEXT IV」と告知をうける。
お子さんの、肝臓に腫瘍があります。肝臓全体に腫瘍があるので、手術はできません。 抗がん剤で腫瘍を小さくしてから、手術を目指しましょう。
頭が真っ白になり、自分ではない自分が聞いている感じがしました。
治療
JPLT(日本小児肝癌スタディグループ)のプロトコールに沿って治療を開始しました。
化学療法では、1クールというサイクルがあります。
- 抗がん剤投与→骨髄抑制→回復期(1クール)
- 回復期~次の抗がん剤投与までに一時退院なども出来ます。
プロトコール名 | 抗がん剤 | 治療回数 |
CITA | シスプラチン/ビノルビン | 2クール |
肝左葉切除手術 | ||
CITA術後 | シスプラチン/ビノルビン | 2クール |
ITEC | イフォマイド/ペプチド/パラプラチン/ビノルビン | 2クール |
肝右葉部分切除手術 | ||
肝部分切除手術 | ||
ITEC | イフォマイド/ペプチド/パラプラチン/ビノルビン | 2クール |
イリノテカン | 1クール | |
超大量化学療法 | ペプシド/カルボプラチン/アルケラン | 前処置 |
自家末梢血幹細胞移植(PBSCT) |
個別治療 | トポテカン/エンドキサン | 2クール |
かっくんのがん細胞はたちが悪く、なかなか消えてくれず、AFPの数値が正常になりません。
血液の回復力が遅くなり、これ以上抗がん剤を使うと体がもたないので、しばらく様子をみることになりました。
- 様子をみるために入院からの解放。
- 自然豊かな田舎町の地元に帰る。
- ストレスをためないような生活を送る。
いつのまにかにAFPが正常値になり、がん細胞は消えたようです。それから10年以上再発もなく過ごしています。
下記で、小児がんの種類や症状などを紹介していますので、参考までにどうぞ。
》【小児がん】子どものがんの種類や症状、治療法などを解説【うちの子の場合の体験談】
まとめ
「肝芽腫」とは、小児がんの一種で、子どもの肝臓がんのことです。
子どもががんを発症するというのは、親にとっては衝撃的でかなりのショックを受けます。また、治療のための長期入院生活は、家族の生活に大きな影響を与えます。
「絶対に治る!」という希望をもって、子どもの治療に寄りそうこと、それだけが私の心の支えとなり、闘病生活の活力でもありました。
今は、もっと治療法などの研究もされ、さらに有効なプロトコールなども確立されていることでしょう。今やがんは治る時代といわれています。あきらめずに子どもの生命力を信じましょう。
- がんと診断されてもあきらめないこと。
- 疑問や不安は、主治医に相談する。
- 納得行かないことは、セカンドオピニオンや親の会などを利用する。
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