「特別児童扶養手当」って知っていますか?
児童手当はよく知られていますが、「特別って何だろう」と思われる方もいるのではないでしょうか。
「特別児童扶養手当」とは、20歳未満の精神又は身体に障害のある子どもを育てる父母などが受けられる手当のことです。
認定基準や所得制限などはありますが、認定され受給されるようになれば経済的にも負担が減ることになります。
この記事では、3歳で小児がん(肝芽腫)を発症して、その治療によってさまざまな晩期合併症が残り、7歳で発達障害と診断を受けた子どもとの波乱万丈な経験から、
「特別児童扶養手当」とは、20歳未満の障害のある子どもを監護する父母、または父母に代わってその子どもを養育している方に対して支給される手当のことをいいます。
精神又は身体に障害を有する児童について手当を支給することにより、これらの児童の福祉の増進を図ることを目的にしています。
引用元:厚生労働省
お住まいの自治体によっては制度が違う場合があります。
対象となる人
- 身体障害者手帳1~3級程度、および一部4級程度
- 療育手帳A・B、愛の手帳1~3度程度
- 手帳をもたないが、障害・疾病などにより日常生活に著しい困難がある場合
- 給付対象の子どもが20歳未満である。
- 給付対象である子どもが、日本国内に住んでいる。
- 給付対象の子どもの監護する保護者または養育者が、日本国内に住んでいる。
- 給付対象の子どもが、児童福祉施設(母子生活支援施設・保育所・通園施設は除く)に入所していない。
- 給付対象の子どもが、障害が理由での公的年金を受給していない。
- 受給者、またはその配偶者、*扶養義務者の前年の所得が一定の額を超えていない。
*扶養義務者とは、民法第877条第1項に定める者のことで、申請者と生計を同じくしている三親等内直系血族(両親、子、(曾)祖父母・(曾)孫)および兄弟姉妹のことをいいます。
所得制限
「特別児童扶養手当」には、所得制限があります。
住民税の課税対象となる所得額から、下記の控除額表の控除額を引いた金額で判断します。
障害者控除 | 270,000円 | 雑損控除 | 当該控除額 |
特別障害者控除 | 400,000円 | 医療費控除 | |
勤労学生控除 | 270,000円 | 配偶者特別控除 | |
宴婦控除 | 270,000円 | 小規模企業共済等 掛金控除等 | |
ひとり親控除 | 350,000円 | ||
社会保険料控除 | 80,000円 |
扶養親族などの人数 | 受給資格者 限度額 | 配偶者および扶養義務者 限度額 | |
所得額 | 所得額 | ||
0 1 2 3 4 5 | 4,596,000 4,976,000 5,356,000 5,736,000 6,116,000 6,496,000 | 6,287,000 6,536,000 6,749,000 6,962,000 7,175,000 7,388,000 |
(単位:円、令和3年8月以降適用)
【受給資格者の所得】
- 扶養親族等に、老人控除対象配偶者または老人扶養親族があるとき→1人につき100,000円
- 扶養親族等に、特定扶養親族があるとき→1人につき250,000円
【配偶者・扶養義務者の所得】(扶養親族等の数が2人以上の場合)
- 扶養親族等に、70歳以上の老人扶養親族があるとき→1人につき60,000円(扶養親族等が全て70歳以上の場合、1人を除いて加算した額。)
「所得額=年間収入額-必要経費(給与所得控除額等)-80,000円(社会保険料相当額-諸控除」です。
等級
- 1級:1人につき月額52,500円(令和3年4月から)
- 2級:1人につき月額34,970円(令和3年4月から)
原則として、
- 4月(12~3月分)
- 8月(4~7月分)
- 12月(8~11月分)
それぞれの前月分までが支給されます。
認定基準
「特別児童扶養手当」は、特別児童扶養手当等の支給に関する法律施行令別表第三の認定基準に基づいて認定されます。
令別表第3に定める「日常生活の用を弁ずることを不能ならしめる程度」とは、精神上若しくは身体上の能力が欠けているか又は未発達であるため、日常生活において常に他人の介助、保護を受けなければほとんど自己の用を弁ずることができない程度のものをいうものであること。
例えば、身のまわりのことはかろうじてできるが、それ以上の活動はできないもの又は行ってはいけないもの、すなわち、病院内の生活でいえば、活動の範囲がおおむねベッド周辺に限られるものであり、家庭内の生活でいえば、活動の範囲が就床病室内に限られるものであること。
引用元:特別児童扶養手当等の支給に関する法律施行令別表第3における障害の認定要領
- 両眼の視力の和が0.04以下のもの
- 両耳の聴力レベルが100デシベル以上のもの
- 両上肢の機能に著しい障害を有するもの
- 両上肢のすべての指を欠くもの
- 両上肢のすべての指の機能に著しい障害を有するもの
- 両下肢の機能に著しい障害を有するもの
- 両下肢を足関節以上で欠くもの
- 体幹の機能に座っていることができない程度又は立ち上がることができない程度の障害を有するもの
- 前各号に掲げるもののほか、身体の機能の障害又は長期にわたる安静を必要とする病状が前各号と同程度以上と認められる状態であって、日常生活の用を弁ずることを不能ならしめる程度のもの
- 精神の障害であって、前各号と同程度以上と認められる程度のもの
- 身体の機能の障害若しくは病状又は精神の障害が重複する場合であって、その状態が前各号と同程度以上と認められる程度のもの
令別表第3に定める「日常生活が著しい制限を受けるか又は日常生活に著しい制限を加えることを必要とする程度」とは、他人の助けをかりる必要はないが、日常生活は極めて困難であるものをいうものであること。
例えば、家庭内の極めて温和な活動はできるが、それ以上の活動はできないもの又は行ってはいけないもの、すなわち、病院内の生活でいえば、活動の範囲がおおむね病棟内に限られるものであり、家庭内の生活でいえば、活動の範囲がおおむね家屋内に限られるものである。
引用元:特別児童扶養手当等の支給に関する法律施行令別表第3における障害の認定要領
- 両眼の視力の和が0.08以下のもの
- 両耳の聴力レベルが90デシベル以上のもの
- 平衡機能に著しい障害を有するもの
- そしゃくの機能を欠くもの
- 音声又は言語機能に著しい障害を有するもの
- 両上肢のおや指及びひとさし指又は中指を欠くもの
- 両上肢のおや指及びひとさし指又は中指の機能に著しい障害を有するもの
- 一上肢の機能に著しい障害を有するもの
- 一上肢のすべての指を欠くもの
- 一上肢のすべての指の機能に著しい障害を有するもの
- 両下肢のすべての指を欠くもの
- 一下肢の機能に著しい障害を有するもの
- 一下肢を足関節以上で欠くもの
- 体幹の機能に歩くことができない程度の障害を有するもの
- 前各号に掲げるもののほか、身体の機能の障害又は長期にわたる安静を必要とする病状が前各号と同程度以上と認められる状態であって、日常生活が著しい制限を受けるか、又は日常生活に著しい制限を加えることを必要とする程度のもの
- 精神の障害であって、前各号と同程度以上と認められる程度のもの
- 身体の機能の障害若しくは病状又は精神の障害が重複する場合であって、その状態が前各号と同程度以上と認められる程度のもの
特別児童扶養手当の対象となる子どもとは、次の「障害の状態」にあることが前提になります。
参考:特別児童扶養手当等の支給に関する法律施行令別表第3における障害の認定について
内科的疾患に基づいた身体の障害および精神の障害の程度の判定にあたっては、
- 現在の状態
- 医学的な原因および経過や予後など
- 日常生活の用を弁ずることを不能ならしめる程度など
考慮して、総合的に認定を行うこととなっています。
申請方法
お住まいの市区町村の障害福祉課の窓口で申請します。
- 認定請求書(所定の様式)
- 請求者と対象の子どもの戸籍謄本または抄本
- 請求者と対象の子どもを含む世帯全員の住民票の写し(続柄、本籍が分かるもの)
- 対象の子どもの障害の程度についての医師の診断書(*所定の様式)
- 請求者、対象の子ども、配偶者および扶養義務者のマイナンバーがわかるもの
- 振込先口座申出書(所定の様式)、金融機関の証明または通帳の写し
- 請求者の印鑑など
*診断書を作成するにあたり、医療機関・医師について特に指定はありません。診断書の用紙は、市役所・町村役場にあります。
- 療育手帳(A1・A2判定)
- 身体障害者手帳(1級から3級まで)
- 「視覚障害(視野狭窄を除く)」
- 「聴覚障害」
- 「肢体不自由(欠損の場合のみ)」
- 「音声・言語障害」など
持っている子どもは診断書を省略できる場合があります。
認定後の手続き
所得状況届
毎年8月12日から9月11日までの間に、所得状況届を添付書類や証書と合わせて市区町村に提出する必要があります。
- 前年の所得の額により、その年の8月から翌年の7月までの手当を支給するかどうかを審査するために年1回提出。
- 引き続き手当を受けられる場合は、新たに証書が交付される。
- 届出をしないと、手当を受けることができなくなる。
- 届出の期間を過ぎて提出すると、手当の受け取りが遅れるので注意する。
有期再認定請求
障がいの種類、程度により異なりますが、1年から2年程度の有期期限があります。
【有期期限のある場合】
有期再認定請求を受けなければ、有期期限の翌月分以降の手当が受けられなくなりますので注意する。
額改定請求
- 特別児童扶養手当を受けている人の監護する児童が増えたとき。
- 対象の子どもの障害の程度が、特別児童扶養手当2級で認定されている場合に、その対象の子どもの障害が重くなったとき。
額改定届
- 特別児童扶養手当を受けている人の監護する子どもが減ったとき。
- 対象の子どもの障害の程度が、特別児童扶養手当1級で認定されている場合に、その対象の子どもの障害が軽くなったとき。
資格喪失届
- 日本国内に住所を有しないとき。
- 対象の子どもが死亡したとき。
- 対象の子どもが請求者に監護または養育されなくなったとき。
- 対象の子どもが児童福祉施設等に入所しているとき。(通園、ショートステイを除く。)
- 対象の子どもが障害を理由として公的年金を受け取ることができるとき。
- 対象の子どもの障害の程度が、手当の基準に該当しなくなったとき。
うちの子の場合
うちの子(かっくん)が、「特別児童扶養手当」を申請したのは4歳の頃です。
- 3歳「小児がん(肝芽腫)」を発症。
- 化学療法と手術を治療するが入退院を繰り返す。
- 4歳「特別児童扶養手当」を申請。(2級認定)
- 再発を繰り返し、自家末梢血幹細胞移植をする。
- 長期の化学療法によりさまざまな晩期合併症が残る。
- 6歳「身体障害者手帳」を取得。(薬剤性感音性難聴、4級)
- 1年生(6歳)「特定できない広汎性発達障害」と診断受ける。
- 2年生(7歳)「療育手帳」を取得。(判定B-2)
- 5年生(11歳)「特別児童扶養手当」の等級変更。(1級認定)
- 15歳「精神保健福祉手帳」を取得。(2級)
- 20歳、特別児童扶養手当「資格喪失」。
かっくんの場合は、肝芽腫の治療がなかなかうまく行かなくて、入退院を繰り返していました。
入院生活は、治療により制限もかなりあるため申請したところ「2級認定」されました。その後、長期にわたる治療により、さまざまな晩期障害が残ったため「1級認定」されました。
下記で、小児がん(肝芽腫)の治療や、発達障害について紹介していますので、参考までにどうぞ。
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まとめ
「特別児童扶養手当」とは、20歳未満の障害のある子どもを監護する父母、または父母に代わってその子どもを養育している方に対して支給される手当のことをいいます。
所得制限や認定基準なども含め、総合的に判断されるので、それぞれの自治体によって異なる場合があります。
手帳がない発障障害のお子さんも、特別児童扶養手当を申請することは可能。
何らかの障害や疾病がある子どもを育てることは、親にとって精神的、身体的、経済的に負担がかかります。
子どもの状態によっては、昼夜を問わず子どもの介助が必要な場合もあり、働きたくても働くことができないという現実があります。認定されれば経済的に大きな支えとなりますので、申請してみてはいかがでしょうか。